4.実施設計の業務


A. 設計図書を作る

その設計図書が建築主の要望・意図・その他に対して適切であるかどうか確認します。
(でき上がった図面、書類ごとに説明をする)

話し合ったあと〈設計図書=設計図と仕様書〉ができます。 その〈設計図書〉は見積りを経て工事金額を決定するものであり、またその建物の施工の詳細までを決定するものです。
だから〈その設計図書〉が建主の希望や要望を確実に満たすものかどうかを見積や工事施工の前に建主が確認しなければなりません。

ところが、建主は〈設計図書〉を自分の眼では確認できないことが多い。
「ここはこうなっていますよ」と図面を見せながら説明をして確認しなければいけない。(設計図書が建主の要望と違っていないように、再度それも、具体的に確認をする作業を設計事務所がする)

B. これらの設計図書を用いて「建築確認申請手続き」を行います

「建築確認通知書」を受け取ってからでなければ、着工はできません。

C. 設計図書を"建主"に代わって施工者に提示し、説明し、質問などに応える

設計事務所は〈建主と話し合いをしてでき上がった設計図書〉を施工者に手渡し、詳細を説明します。

  • 施工者はその設計図書を見て〈質疑書〉を設計事務所に提出する。
  • 設計事務所はその質疑に〈 応答書 〉を出す。
  • 施工者はこれらによって更に詳しい情報を得てから〈 設計図書 〉に基づく〈 見積書 〉を作成提出します。
  • 相手の施工者を数社選定し競争させてもよい。

D. 設計図書を"建主"に代わって施工者に提示し、説明し、質問などに応える

材料・数量・単価・手間賃・会社利益・その他各金額が妥当か をチェックします。
普通、住宅の場合、現場経費は12.5%内外、会社経費が12.5%内外です。 または、両方を一緒にして経費とすることもあります。

この場合、経費の金額や%を気にすることは大事ですが、もっともっと大事なことがあります。
例えば、「おたくだから経費を無しにしましょう。もうけなくてもいい…」と言って見積書に記載されていた経費を0(ゼロ)にする〈売手〉がいる。

少なくとも、経営をしている個人や会社である以上、「経費をゼロにすること」はあり得ません。
「経費をゼロにする」ということは「その分がどこか他の項目に紛れ込んでいる」ということです(もし本当に経費がゼロでも仕事をするならば、それは〈倒産前の自転車操業〉の可能性があるからかえって注意しなければいけない)。

だから、「経費をゼロにする」ことよりも、他の項目の単価・数量・金額が設計図書に基づくものであり、妥当なもの、正当なもの、であることが大切です。こられが妥当か?正当であるか?は専門的な知識と経験を必要とするものです。 一般の方々では分かりにくい。

設計事務所は〈売手の見積書〉をチェックするときにどうするか?は次の通りです。

  • まず、拾い落としがないかチェックします。見積相手が数社の場合特に重要です。
  • つぎに材料(製品)の単価が正当かどうか?又、数量を確認する。
  • すべての材料等の数量が設計図書のとおりであるかをチェックする。
  • これら全項目を詳細にチェックします。

だから「経費がゼロ」と言っても、それ以上のものが他の項目に紛れ込んでいたら、ちゃんと分かる。 設計事務所は一般にこのような見方をします。
したがって
 1.「経費はゼロ」といったらかえって注意する。
 2.見積の他の項目全体が正当(実費=安い)であるかどうかを見定める。
 3.見積が正当であれば、経費も正当なだけ認める。

その方が、結局は安くてよい買い物をすることになります。

E. 適切な施工者を選定するためのデータなどを整理し、建主に助言・進言する

見積書を提出した施工者(一社または数社)のデータを整理して建主に助言します。
(見積内容を検討したり、事前の質疑の内容を分析したりすることから、施工者の技術的能力が分かることもある。)

見積書は具体的な金額を表わすものですが、同時に、その見積書を作成した側の意図や技術的な傾向をも物語るものでもあります。
例えば、木材や大工手間賃が高いか安いかで〈木材工事〉を〈いつも使っている社員に近い立場の大工〉が担当するのか、〈別のグループ〉に外注するのか、わかります。

現在は、会社・個人を問わず、何らかのやり方で技術を高めることによりコストを削減し、価格を下げないと生き残れない時代です。そのことに対する会社の姿勢が、見積書の数字や項目や構成に表れる。見積の過程でやりとりする質疑応答についても言えます。「こんな質問をする会社は、どうも…」となることもあります。

それらを専門家として総合し、整理して助言します 。

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